さらり

それなりに働いてそれなりに歳を重ねた30代女が思うこと

#オタクじゃなくたって恋は難しい

タイトルはあのマンガから。
私は、恋愛の面でいうと20代を棒に振った。端的に言うと、いわゆる『一番可能性の高い時期』を後に二股の末他の人と結婚した一人の男にくれてやってしまった。それはそれで今となっては愉快な思い出だし現在の私の人格を作る要素としてはかなり大きなものになったけれど、アラサーを卒業した今未婚だということを鑑みるとまじで勿体ないことしたな…と思わないこともない。

その男は10歳上で、二卒で転職した先での直属の上司に当たる人だった。大学を卒業するまで恋人の類がいたことがなかったというのが当時の私にとってはなかなかのコンプレックスで、女性としての魅力がないのだと思いこんでいたし、そのくせ『女性』としての視線を向けられることが怖いというかとても気持ち悪くて、女性という役割を求められるのがいやという面倒くさい状態にあった。
で、その男は多少恣意的に書いている自覚はあるがたぶんそこまで見抜いて10個下の、当時垢抜けてもおらず世間もよく知らない、お手軽そうな私に手を出したわけだ。いま当時のその男の年齢を超えて思うのは『ろくなもんじゃねえな』ということ以外の何もない。まじでろくなもんじゃねえな。しかもこの男、私の覚えている限りでは『好きだ』とか『付き合おう』とかいう区切りのような言葉を一度も言ったことはなかった。まあそれは別れる時に『付き合おうとか言ったことはなかったけど』と自覚があったことを白状したので良しとする。

この男の何がアレだったって、私に手を出した時点で彼女がいたし私と別れた約3ヶ月後に結婚していた。取り立てて顔やスタイルがいいとか、年収が高いとかそういう要素はなかったにもかかわらず女関係が途切れなかったのは、なんというか『言いくるめる力』が異常にあったからのような気がする。私も好きだとか付き合おうとか言われないままうまく言いくるめられてなんとなく4年くらい付き合って30を目の前に振られたからきっとそうなのでしょう。
そしてこの男、怒ったり機嫌が悪くなるとそれを口には出さず黙り込むタイプだった。同年代になった今思う、子供かよ…。気持ちは分からんでもない、怒ることは体力も気力も使う。しかしそれを10歳下相手にやるか。今の自分が職場の後輩たちに同じことをしていないという自信はないけれど、まあやっぱり普通に考えたら割とありえない。子供か。

なぜこんなことを言い出したかというと、親しいところにいるまさに20代の女性がかつての私と同じ轍を踏もうとしていると知ってしまったからだ。当時の私と同い年、相手も当時のその男と同い年。出会い方もだいたい同じ。そして多分、二股をかけられているのも同じ。
現在の彼女と私の関係においては、『好きにしたら?』と言うしかない。たとえそれが彼女のキャリアやパーソナリティに大きな傷をつける結果になる恋であったとしてもだ。けれど、『似たような経験をしたことのある1人の女』としての視点でいうと、どうしても止めたくなる。言っても聞かないだろうし、もしかしたらいい結果になるかもしれないし、かつての自分がもし同じようなことを言われたって聞かなかっただろうから無駄骨だとは分かってるけど、どうしても一言だけ言ってあげたくなる。余計なおせっかいだと知っていてなお。

恋は難しいものなのだろうというのは、何となく分かる。逆に言えば何となくしか分からない。その恋が今現在の彼女の中では最優先事項なのだろうということは分かるし、『あなたと同じ結果になるとは限らない』と言われてしまえば全くおっしゃる通りですとしか言えない。いつもだったら『ポシャればいいのに』などと思ってしまうのだが(性格が悪い)わりと長い間比較的近いところにいたということもあってか今回ばかりはそうも思えず、私にできるのはただ彼女の恋が悲しい結果にならないようにと願うことだけだ。

…それにしても、かつての男は書けば書くほど『なんで私この男が好きだったんだろう』と思うことばかりだ。これこそが恋は盲目というやつか。当時の私よ、もっといい人がいるかは分からないけど雰囲気に流されるのはやめておきなさい。10年後の私との約束だ。